未経験 職種への薬剤師の転職事情について記載します。
調剤業務の自動化の促進など、需要は減る傾向にあります。
しかし各地域への供給密度などを考えても、まだまだ求人数が多い状況と言えます。
しかし薬剤師とはいえ、臨床から創薬事業への挑戦は未経験領域となりハードルが高いもの。
ただし諦めることなかれ、薬剤師というポテンシャルを活かせばチャンスがあるのです。
薬剤師の転職を考える
薬学生は多くが、免許取得後は臨床薬剤師として病院や薬局に勤めます。
下記の記事でも解説していますが、平成30年度の調査で約77%の薬剤師が病院や薬局といった医療機関に勤務しています。
臨床薬剤師のキャリアを積むことで転職やキャリアアップの選択肢は大きく広がります。
しかし、それはあくまで”臨床薬剤師”としてのキャリアです。
臨床以外の活躍の場を求めて…
では、薬の世界でも、”臨床以外の分野にも挑戦したい”という思いを抱いた場合はどうなるでしょう。
現実、多くの場合は経験者採用が圧倒的に多いのが現状です。
医薬品業界には薬剤師とはいえど、未経験だと挑戦権すらないのか…そんな思いを抱く方も多いかもしれません。
しかし、そんな状況を打開できるするための考え方・方法があります。
諦める前に読んでみてください。
①薬剤師というポテンシャル
いくら薬剤師とはいえ未経験職種への挑戦はハードルが高いのが現状。
ですが、今一度ポテンシャルについて考えてみてください。
創薬業界の仕事や役割は、薬学教育において学習する機会があり、全く知らない薬剤師はいません。
全くのズブの素人ではありません。
加えて特に重要なのが薬事関係法規の理解です。
法令意識や倫理観を持ち合わせる薬剤師は創薬業界においても十分活躍が可能な素養と言えます。
実はこれだけでも大きなアドバンテージがあるのです!
②挑戦したい業種に就くための計画
未経験での転職を考える場合、具体的にどんな職種に就きたいのかを明確にしておく必要があります。
MRや臨床開発職など様々な業種がありますが、職種によって就業しやすさのハードルが異なるからです。
その視点は以下の2点
- 経験よりマンパワーが必要とされる仕事
- メーカーかCROのどちらの求人なのか。
経験よりマンパワーが必要となる職種
経験者採用が多い製薬業界でも、企業活動にとってマンパワーが必要な職種は採用の可能性が高いです。
- CRA(臨床開発モニター)
- QC(品質管理)
- MR(医薬情報担当者)
- DI(学術)
DI職以外は新卒採用で採用枠がある職種です。
これらは実働部隊であり、一番人員が欲しい職種と言えます。
新卒入社でした際は現場から学び、徐々に社内の中枢にキャリアアップしていきます。
毎年新卒が補填されるにしても、中途採用も受け入れてマンパワーを保持しているに越したことがない領域と言えます。
その理由は、それぞれが直接会社の実績(利益)を創出する部門だからです。
そういう職種は狙い目と言えます。
メーカーかCROのどちらの求人なのか
結論として、CROでは実働部隊の求人数が多くあるためチャンスといえます。
現状の医薬品業界におけるトレンドは、実働部隊を外注して開発コストを縮小することにあります。
CROとは製薬メーカーからの治験関連業務委託をする組織です。
もともとの存在意義はメーカーのマンパワー不足を補うことや、自前作業だけよりも網羅的な治験を多数遂行できる点です。
しかし近年では経験を蓄積したCROのほうが、治験のエキスパートとしてメーカーを支えるほどの立ち位置になっています。
企業にとっては、自前で実施するよりも費用面が抑えることが可能です。
就労形態も様々で、外注モニター職として働く場合や、メーカーに直接派遣される形式で実務に当たる場合などもがあります。
かつて外部委託といえば、多くの人員を要する治験の実働部分が主流でした。
しかし近年ではMRなど、マンパワーを要する他の職種においても外部委託する流れが加速しています。
MRの仕事は情報提供ですが、業務上医療関係者との関係を築くことが多く、近年は学術的なお付き合いに重点をおいたMSL(MA)などの職種にステップアップするケースが増加しました。
そのためMRは外注されたコントラクトMRが増加。自前の組織力が弱い場合はMSLも外部委託してしまうケースさえあるのです。
DI業務も近年は外注される傾向にあります。
医療関係者からの報告・相談を受ける業務は、電話相談窓口が丸々委託されているケースも増えているのです。
このように、
意思決定に近い要職に人員を割き、
実働部隊は極力外部委託するトレンドとなっています。
そしてそれはこの先、更に加速していくことが確実です。
研究領域でも、ベンチャー企業の買収によってシーズ化合物を得ることも増加しました。
かつては邪道、格好悪い印象さえありましたが、ベンチャー企業の台頭や経済観念も相まって現在では重要な施策となっています。
希望する職種が高次の職種の場合
高次の職とは、多少の実務経験や知識が問われる職種です。
具体的には薬事領域、研究開発領域ではMSL、治験の統括職等があります。
これらの職種の求人情報は、ほぼ間違いなく経験者採用の案件となっています。
しかし、回り道をせず、いきなり高次の職種に就きたい!と思う方も多いと思います。
※高次の職種とは下記の別記事でも解説しています。
これらは多少の経験が必要な高次の職種です。では、高次の職種に就くにはどのようなルートがあるのか。
- 別の業種で入社して、そこからステップアップを狙う
- 薬事業務への適正を理解してもらい、ポテンシャルを買ってもらう
別の業種で入社して、そこからステップアップを狙う
まずは王道の方法です。
実働部隊は人足、というイメージも否めませんが、実際の業務や法規に触れるため大変経験が得られる職種です。
経験があるからこそ高次の職種にステップアップができます。
臨床開発職において、私が思う最良のパターンはメーカー就労型CROの臨床開発職と考えます。
メーカー就労型のススメ
そもそも、メーカーに直接採用される臨床開発職は求人が少ない傾向があります。
しかも殆どは経験者採用です。メーカーお抱えとなるには相応の経験が求められるからです。
一方CROのモニター職求人は多数あります。
こちらであれば間違いなく就職は可能ですが、メーカーから外注された仕事をこなすだけの実務担当者の色合いが強くなってしまいます。
しかしCROの中には、人員をメーカー内に派遣する業態があるのをご存知でしょうか。
この場合のメリットは、メーカーの意向を肌で感じながら実務に当たることが可能です。
また数年経験を積めば働きぶりを認められ、メーカー正社員に登用されるケースもあります。メーカーにさえ就職できれば別職種への転籍も可能が出てきます。
受託型のCRO内では、キャリアアップすることで治験統括のポストにつくこともできますが、多くの場合、要職はメーカーで経験を積んだ人材が転職しきているケースが目立ちます。
つまり、メーカーへの就職を視野に入れている場合は、やはり就労型CROをおすすめします。
一度就職してしまえば…
臨床開発職からのキャリアプランは様々あります。
例えば、治験データを収集し解析したあとは、薬事申請部門にバトンタッチします。
したがい、ゆくゆくは薬事申請部隊である開発薬事職にも挑戦できるようになると思います。
薬事申請部門であれば様々な職種と関連が持てます。
治験部隊はもちろん、製造部門、分析部門から情報を収集し申請資料を作成します。そうなるとCMC薬事能力、分析法への理解が深まり、製造や品質保証分野にも可能性がひろがって行きます。
薬事業務への適正を理解してもらい、ポテンシャルを買ってもらう
さて、王道の経験の積み方を解説しましたが、一番のネックは時間がかかることです。希望の職種に直接就きたい!と思っても、高次のポスト求人はほぼ経験者採用しかありません。
ここで切り札となるのが薬剤師としてのポテンシャルです。
法規への理解、倫理感覚を持つ薬剤師なら素養は十分あります。
私個人の見解として、実務経験とはあくまで経験であり能力ではありません。
即戦力を求める企業としては経験あり≒能力が備わっていると考えるが普通ですが、逆にいうと能力があることに納得してもらえれば、経験はあとから積ませせることが出来るのです。
能力があることに納得させる材料として、”薬剤師免許”というのは強力な資格だと改めて認識する必要があります。
未経験 でもポテンシャルを理解してもらう具体的な方法
転職サイトの利用では、必ずしも解決になりません。理由を説明します。
大手人材紹介転職サイト
最大のメリットは求人案件の圧倒的豊富さです。
これは特化型には絶対勝てません。
デメリットは領域限定がないため、未経験でも可能な実働部隊などの案件しかありません。
もう一つは担当アドバイザーの専門性が低いことがあるです。
実働部隊から着実にステップアップを望む場合はよいですが、より高次の案件を望むことは難しいでしょう。
また、担当アドバイザーは企業と求職者の間に入り、求職者をフォローしてくれる大事な役割です。
しかし、専門性が無いと求職者のポテンシャルを最大限企業に伝えることは難しくなってしまします。
特に未経験領域への転職の場合は、担当アドバイザーの専門性は重視すべきです。
また大手の薬剤師向けの転職サイトについては、そのほとんどが臨床薬剤師への転職案件を斡旋しています。
したがって企業への転職には正直おすすめできません。
業界特化型の人材紹介転職サイト
業界特化型のサイトは他に未公開の求人を扱っているなど、特定の業界を目指す人には非常に選択肢が多いのがメリットです。
仲介する担当アドバイザーも実務経験がある場合が多く、求職者の魅力を最大化してくれます。
しかし、最大のデメリットとしてはほぼ確実に経験者を対象としているため、未経験者の対応ができない場合がほとんどです。
未経験からの採用を目指す方には利用が難しい場合があります。